仲代表の「グローバルの窓」

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第45回 “Now what do we do ?! ”(さあ、どうする?!)~その1~

2023.06.21

社内の安全連絡網の、最後は私。その意味とは、、 

NECのフィリピンでは、グループ全体で社長間の「安全連絡網」を作成し、何かあれば連絡を取り合っていました。
連絡網の最後は私でした。私の会社は、前回も書きましたように、NECの冠会社だったので、私がフィリピンでの総責任者となるのです。
このことは、治安リスクの多い国ですので、人質となれば私が会社を代表して身代わりに人質になることをも意味します。

「フィリピンは初めて」というビジネスパーソンをおもてなしすることに

ある日、私のビジネスの関係で出張者が3人来ることになりました。みなフィリピンは初めての方ばかりです。月曜日にお客様とミーティングをするので、他のアジアの国から土曜日にマニラに入ることになりました。

週末をマニラで過ごすことになったので、私は週末の食事を一緒にしようと思っていました。勝手な行動に出られ、何か起こったら手遅れになると思ったからです。

  土曜日の昼過ぎ、ホテルに無事チェックインされたのを確認し、「一緒に食事をしませんか」と誘ってみました。しかし、「仕事があるし、3人いるから何とかなります。それに休養したいので」とのことでした。

私は、「フィリピンは油断していると何が起こるかわからないので、行動は必ず3人一緒にお願いします。どうしても一緒に行動することが無理な場合は、必ず互いの安否を取るようにしてください」と言いました。

そうはいっても、私としても確認は怠らず、土曜日の夜と日曜日の夜に3人がちゃんとホテルに滞在しているかを電話で確認していました。

行動は必ず一緒に、と伝えたのに、一人いない!?

  月曜日の朝9時、3人をピックアップしようと私はホテルに行きました。
既に2人はロビーにいましたが、残りの1人がまだ来ていません。
部屋に電話をしましたが、応答がありません、朝食のルームにもいません。

これはおかしいと思い、「昨日の夜は3人とも無事ですと確認いただきましたが、今朝は彼に会いましたか」と聞きました。しかし、二人とも「会っていない」と言います。「昨日の夜はいたのにどうされたんでしょう」と言うと「実は昨日は彼だけ別行動だったんです」と言うのです。
「午後にマニラの街中に行こうと誘ったけれど、彼は部屋で休むと言ったので、それっきりでした。当然部屋にいると思っていました」というのが実情でした。

私は、これはまずいと思ったので、すぐにホテルに頼み、彼の部屋を開けてもらいました。
ところが、彼の部屋には机上に書類が広げられたままで、寝た形跡がありません。
Oh my goodness!

最悪のケースを想像してしまう、、 

1時間ほどホテルで待ちましたが、彼は現れません。おそらく二人が街中に出たあと、一人で外出したのでしょう。
私は3つの可能性を思いました。

一つは、流行りの睡眠薬強盗にやられた。
一つは誘拐に遭った。
最後の一つは殺されたという可能性です。

睡眠薬強盗なら金銭はすべて盗られても、タクシー代だけは残してくれるので、ホテルに帰って来られるはずです。私はその可能性に期待しました。その場合、彼は遅くとも午前中にはホテルに帰ってくると考えました。
二つ目の誘拐は、私にとって最悪です。彼の身代わりに私が人質を買って出る必要があるからです。この場合、そろそろ電話がかかってきてもいいはずですが、誘拐したという電話はまだありませんでした。

最後の殺されたという可能性はほんとうに最悪のケースです。新聞をすべてチェックしましたが、マニラ湾に日本人の死体が浮かんだという記事はありませんでした。

 私は一つ目の睡眠薬強盗に賭け、どんなに遅くとも午前中に戻ってくると念じました。人事の方と相談し、午前中まで待って、それでも戻って来ないなら警察に届けようと決めました。
東京の本社には、最悪の事態になることを勘案し、午前中を待たず、10時30分くらいに私のカウンターの事業部長に報告しました。

日本側の対応の早さに驚き

そのあと30分くらいして事業部長から連絡が入り、
「海外事業グループ内で対策本部を設置した。日本側は海外事業グループの専務をトップに私が実行責任者、現地は仲君が責任者だ。適宜速やかに状況を報告してくれ」というのです。これには舌を巻きました。こっちはまずは報告をしたのですが、日本側ではたった30分で一気に対策本部を設置する迅速さです。
フィリピンを熟知した海外事業グループの知見と力量をまざまざと見せつけられる思いでした。私は頼もしさを感じると共に一層身の引き締まる思いで事態に向き合いました。

連絡をひたすら待つ。気が気ではない時間が過ぎていきます

?午前中、残念ながら彼に関する連絡はなく、私は人事の方と無為に時間を過ごすばかりでした。ただ一点期待が持てたのは、誘拐ではないのではないか、ということでした。
誘拐ならいくらなんでも電話が来るはずだからです。
しかし楽観はできません。いったいどうなるのか、どうすればいいのか、打つ手が見つかりません。(つづく)


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