マーケティング最前線!

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激レア本!元F1レーサー、キミ?ライコネン(フェラーリ)の『俳句集』

2023.07.10

モータースポーツの最高峰「F1」とは!

モータースポーツ界の頂点に君臨する「F1」(エフワン)。F1とは「Formula One」(フォーミュラ?ワン)の略。「世界最高のドライバー」が「世界最速のマシン」で「世界最難関のサーキット」で競い合う自動車レース。レーシングカー(「フォーミュラカー」)は、定められた寸法、排気量などの「規定」(フォーミュラ:公式)に従って作られる。「1」(ワン)は最高位を意味。レースの主催は、FIA(Fédération Internationale de l’Automobile: 国際自動車連盟)。

 F1は「シングルシーター」(単座席)のレースの最上位に位置し、最高速度「320km/h」?平均速度「230km/h」でサーキットを周回。走行距離は「305kmを超える最も少ない周回数」で「50?70周」を走行。レース時間は最大2時間。「タイヤが剥き出しになっている」「タイヤは4つ」が大きな特徴です。より速く、より運動性の優れたレーシングマシンを追求し「軽量?低重心化」の改良が重ねられ、最終的にタイヤを覆うフェンダー(泥除け)が除かれていきました。

 F1がヨーロッパを中心に発展してきた理由のひとつとして、ヨーロッパ人の「心性」(しんせい)があげられます。欧州には「車輪がついたもので競争する」長い歴史があり、ローマ帝国時代にまでさかのぼるという分析もあります。 

F1の最高技術は、やがて日常生活に転用され、社会的な貢献へ!

F1の技術は、最高峰、最先端で最も複雑な形態の一つ。F1マシンは約1.4万個のパーツ(部品)の集合体で、100%の精度で組み立てられなければなりません。仮に99.9%の精度で組み立てられたとしても、0.1%の部品が不正確のまま走行すれば大事故につながりかねません。そうした超高精度のテクノロジーがのちに私たちの日常生活(たとえばクルマの技術)に転用されるという意味で、社会的な貢献も果たしています。

F1は、世界各国でグランプリ(GP)が開催されます。原則として1つの国で開催されるグランプリは1シーズン中1回だけ。グランプリは基本的に「国名」+「GP」という形で、「モナコGP」「サウジアラビアGP」と呼ばれます。本年(2023年)は23戦開催され、第17戦日本GP(鈴鹿)は、9月24日(日)が決勝。参戦チームは、レッドブル?レーシング · スクーデリア?フェラーリ · メルセデスAMG F1などの10チーム(ドライバー2名/チーム)。

人気、再拡大中のF1の売上規模3,500億円は日本マクドナルド社と同規模!

2022年のF1(FIA [国際自動車連盟]主催)によると、収益(売上高)は前年比20%増の25.7億ドル(約3,506億円)。この売上規模は、日本マクドナルドホールディングス社(連結)と同規模。

F1の収益の大部分を構成するレース開催権料、放映権料、スポンサー料の合計は前年比14%増の21.1億ドル(約2,876億円)。全体として、F1が全10チームに支払った金額は前年比8%増の11.6億ドル(約1,580億円)。

2022年の観客動員数は570万人。世界的なコロナ危機前の2019年から36%増加。売上高や観客動員数を見ても、F1人気が引き続き拡大していることがわかります。

「F1の象徴」フェラーリの元レーサー、キミ?ライコネン

この「F1の象徴」がイタリア?スポーツカーメーカー「フェラーリ」(Ferrari)。なぜなら、1950年の『F1世界選手権』創設以来、1年も欠かさずに参戦を続けてきた唯一のチームだからです。さらに、フェラーリの創業者エンツォ?フェラーリ(Enzo Ferrari)と、その名を冠した超高級スポーツカーの絶対的カリスマ性です。

フェラーリといえば「赤いボディ」と黄色を背景とした「跳ね馬」のロゴ。そのフェラーリ所属時の2007年に、F1ドライバーズチャンピオン(世界チャンピオン)を獲得したのが、フィンランド出身のキミ?ライコネン氏(Kimi Raikkonen、1979年生まれ)。ずば抜けた速さ、天性のドライビングテクニックから、フィンランドのスポーツ選手を称える「フライング?フィン」(Flying Finn「空飛ぶフィンランド人」)の愛称も持っています。

 2018年10月、そのライコネン氏が『俳句集』(西洋流)を発刊。正式タイトルは、「WINNOW YOUR WORDS: KIMI’S BOOK OF HAIKU」(選び抜いたあなたの言葉:キミ?ライコネンの俳句集)。「winnow」(ウィノー)とは「choose」と同義で「選び抜く」という意味。「笑える俳句でドライなユーモアを披露」していると大評判になりました。現在、その俳句集は、なかなか手に入らない「激レア本」になっています。

 実は、ライコネン氏の『俳句集』は、2018年のF1第17戦日本GP(鈴鹿)時に、フェラーリと、メインスポンサーである世界的タバコメーカー?フィリップモリスとの間の新しいパートナーシッププロジェクト、『Mission Winnow』(ミッション?ウィノー)の発表会で配布された著書でした。

 『Mission Winnow』とは、F1でタバコの広告が「禁止」されたことを受け、フェラーリと主要スポンサーのフィリップモリス社(登記:米国コネチカット州)が、メーカー名(ブランド名)ではなく「プロジェクト名」という新しい形で動き出した広告?宣伝プロジェクトです。『Mission Winnow』は「もっとも価値あるものを選別するミッション」という意味。このプロジェクトにはタバコの「無煙代替品の開発」なども含まれています。ライコネン氏の『俳句集』のタイトルは、プロジェクト名にかけています。

シェイクスピアに並ぶ作家、ライコネン氏?!

『俳句集』の発刊の際、ライコネン氏はTwitterで次のようにつぶやきました。

 “Shakespeare, Runeberg, R?ikk?nen.”

(シェイクスピア、ルーネベリ、ライコネン)

 世界一有名な英国劇作家シェイクスピアと、フィンランド国歌を作詞した国民的詩人のルーネベリ。その次が自分(ライコネン)。彼のこうしたユーモアと、『ICEMAN』(冷徹な人)の異名を持つ寡黙な超テク?ドライバーのギャップに多くのファンが魅了されるのでしょう。

 『ライコネン俳句本』の最初のページには、次のような言葉が、彼の署名とともに記されています。

「The right words do not need others to mean something」

 日本語に訳せば、「的を射た適切な言葉があれば、何かを説明する余計な言葉は必要ない」。

 『ライコネン俳句本』は、同じページの上段に「英語」、下段に「日本語」(訳者は不明)というレイアウトで、彼の「西洋流の俳句」が掲載されています。いくつかを紹介しておきましょう。

radio silent

quiet radio

very obvious things

is not necessary

静かなラジオ

音出ない

当たり前だが

必要ない

the circuit

narrow in some places,

wide at the other

it depends

on where you are

サーキット

狭いとこ

広いとこある

場所による

 日本人が読んでも、何か哲学的な香りがするなか、クスッと笑えます。たまたまT B S系バラエティ番組『プレバト!!』(プレッシャバトル)で人気の夏井いつき先生の著書『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(p.98、PHP研究所、2018年)を読んでいたら、上級者向けの「無季俳句」(むきはいく)があることを知りました。季語を持たない俳句、あるいは季語はあっても季感(季節の感じ)を持たない俳句のことだそうです。ライコネン氏がその無季俳句を意識しているのかどうか、知るよしもありませんが。

ところで、最近、動画配信「Netflix」の、人間模様に焦点を当てたF1ドキュメンタリー『Formula 1:栄光のグランプリ』を視聴して、F1のファンになる世界の若者世代が増えていると聞きます。唯一の日本人F1ドライバー、スクーデリア?アルファタウリ所属の角田裕毅氏(Tsunoda, Yuki. 2000年生まれ)の活躍で、日本のZ世代のファンも増加中。実際、昨年(2022年)3年ぶりに開催されたF1日本GPの鈴鹿サーキットには、20万人が詰めかけ、若いカップルの入場者も多かったと報じられています。

 世界だけでなく日本においても「新時代」が到来しているF1に要注目です!


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