仲代表の「グローバルの窓」

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第51回 “Next job is how to re-enter into oveseas “Keitai” market and promote its business.” (海外事業部が消滅!次の仕事は、海外携帯電話市場への再参入とビジネス推進)

2023.09.07

海外事業部が消滅!

 フィリピンから帰国した年(2000年)の4月に本社は組織の大変革を断行しました。これまでの営業部と事業部のマトリクス構造から、事業本部を基にした3つの社内カンパニー制へと移行したのです。ネットワークス(通信系)、ソリューションズ(IT系)、半導体のカンパニーです。これにより、常務が言っていたように、海外事業部は消滅しました。海外事業部に所属していた者は、皆それぞれのカンパニーに散りました。私はネットワークスへ異動となりました。とはいえ、通信系のカンパニーの中で海外営業推進部という部署で、事業の幅が通信系に絞られ、地域が世界に広がったという程度の変化でした。

 ところが、香港出張中に突然、同じネットワークスカンパニー内の携帯電話事業本部に異動となりました。わずか3か月のことです。元イタリア会社の社長が帰国され、携帯電話事業本部に着任、私を引っ張ってくださったのです。携帯電話はイタリアで新規市場参入を果たし、以後トップ3を市場で確保してきた事業でしたし、アジアでもマレーシアを中心に売り込んでいた事業でしたので、私自身も愛着がありました。事業部の方々もたくさん知っていました。私には馴染みある事業でした。しかし、何より元上司(元イタリア会社社長)や元欧州部のメンバーと一緒に仕事ができることを嬉しく思いました。

欧州の仕様は日本人には読み取れない? 

 NECの携帯電話事業は、アナログ時代(1G)にはモトローラやエリクソンと並び主要端末ベンダーとして市場を席巻していました。しかし、1990年代半ばから起こったデジタル時代(2G)を迎えるに当たり、NECをはじめ日本ベンダーは大きく遅れてしまいました。欧州が策定したGSMという新しい移動通信の仕様を読み取れず、技術開発に大きな遅れをとってしまったのです。仕様内容は厖大とはいえ、文書として存在しているので、それをしっかり読み込めばいいと思うのですが、エンジニアの方によると、表面上に書かれていることが理解できても、そのニュアンスや文脈を日本人が読み取ることは至難の業ということでした。言語ではなく、考え方や価値(異文化)を読み取る必要があったということなのかもしれません。 

 けっきょく、優秀な日本人の開発者の頭脳を突き合わせても開発で遅れを取ってしまい、NECは海外市場から撤退を余儀なくされました。2Gになって市場を寡占したのが北欧の雄、ノキアでした。また、この頃から台頭してきたのが韓国のサムソンでした。技術の変わり目は、市場のプレイヤーを塗り替えます。NECがドイツのプリンタ市場でトップシェアを奪取したのは、キャラクタープリンタからドットマトリックスプリンタに市場が移ったタイミングでした。しかし、携帯電話市場では、アナログからデジタルへ通信システムが移行するタイミングで見事に欧州勢にやられました。

アライアンス戦略 将来技術を梃に今の技術を獲得せよ! 

 そんな状況の中で、NECの携帯電話事業は捲土重来を期すべく、海外市場への再参入を大きな目標としました。次期技術である3Gの技術開発はNECがリードしていましたが、3Gの市場が本格化するのはまだ先のこと。それまでは2.5G(GPRS技術)でつなぐ必要がありました。

 日本国内では、1998年2月から始まったiモードが爆発的に売れ、NECはトップシェアを確保していました。いわゆるガラケイです。携帯電話ビジネスのノウハウは日本市場で蓄積していましたが、問題は2.5Gの通信技術でした。例によって欧州発なのでNECにはなく、その技術を欧州企業とアライアンスを組んで持ってくる必要がありました。欧州企業にとってNECとアライアンスを組むメリットは何か?それは、近い将来主流となる3G技術を先行して獲得できることでした。「3G技術があることを梃にアライアンスを組んで、2.5G の技術を確保する」それが当時のNECの戦略でした。

 ではどこと組むか?そこで候補に挙がったのがシーメンス(独)とアルカテル(仏)でした。どちらの企業と組むのがよいか。携帯電話事業本部での私の最初の仕事はアライアンスを実現させることでした。どこと組むか。異文化の企業とどう向き合うか。手ごわい仕事ですが、海外市場への再参入を果たすにはやるしかありませんでした。


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