マーケティング最前線!

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時刻表に載らないJR東海/新幹線「見ると幸せ」ドクターイエロー、ラストラン!そして「幸せ配り」を引き継いだ「ディズニー新幹線」登場!

2025.03.10

2025年1月29日。新幹線のお医者さん、「ドクターイエロー」が最後の検測走行を終えました。「世界で最も安全な高速鉄道」と言われる新幹線の安全を見守り続けてきた四半世紀。「ドクターイエロー」の人気の要因を整理します。そして、JR東海とディズニーの「夢のコラボ企画」、東海道新幹線開業以来初めての試み、「幸せ配り」を引き継ぐ「ディズニー新幹線」を紹介します!

新幹線のお医者さん「ドクターイエロー」、ラストラン

2025年1月29日。東海道?山陽新幹線の点検車両「ドクターイエロー」のうち、JR東海が所有するT4編成が最後の検測走行を終え、東京駅に到着。四半世紀にわたり、「新幹線のお医者さん」として、「世界で最も安全な高速鉄道」と言われる新幹線の安全を守り続けたラストラン。現役を引退し25年6月ごろから「リニア?鉄道館」(名古屋市、JR東海運営)に展示される予定。

今回引退したJR東海が保有するT4編成は2001年9月から運用を開始。2005年に登場したJR西日本所属のT5編成と交互に走行し、東海道?山陽新幹線(東京~博多間)で検測を担当。

老朽化のためこのほど役目を終えたT4編成に対して、T5編成(JR西日本)も2027年度を目処に引退予定。「ドクターイエロー」が担当している検査業務は、2027年度以降、N700S(第6世代)に導入される営業車検測機能によって代替。T4編成とT5編成は、黄色い車体に青帯の7両編成という点は同じですが、アンテナの数や装着する台車など、細かい部分に違いが存在。「T」は「Test」(点検)の略で、数字は導入の順番。

ドクターイエローを目撃できる確率は「約1%」

正式名称「新幹線電気軌道総合試験車」、ニックネーム「ドクターイエロー」(923形)は、新幹線の高速運転を支える様々な設備の状況を走りながら測定する、いわば「新幹線のお医者さん」。7両編成で最高速度は営業用新幹線と同じ270km/h。

約10日に1度の周期で、電気設備や軌道設備などの状態を計測。ここで得られたデータを、日々実施している各設備のメンテナンスの基礎資料として活用。

走行は、1ヶ月に3回の速達型検測(「のぞみ」と同じ停車駅)と2ヶ月に1回の各駅型検測(「こだま」と同じ停車駅)。新幹線利用客がドクターイエローを目撃できる確率は「約1%」で、遭遇できるレアなチャンスが「幸運を運ぶ」と言われる理由。

なお、JR東日本も、ニックネーム「East i」(イーストアイ)という新幹線のお医者さん、検測用新幹線(E926形電車)を所有?運行しています。白地にあざやかな赤のラインが入ったデザインの「East i」を見ると「幸運が訪れる」と、鉄道ファンの間で高い人気を誇っています。

ドクターイエローの名称が浸透したのは1990年代

交通?運輸?モビリティ産業のビジネスニュースサイト「Merkmal」(メルクマール)の記事(2025年1月11日)によると、新聞でドクターイエローという呼称が初めて登場したのは、『読売新聞』1991(平成3)年2月27日付け夕刊。そこでは、「新幹線の守り神ドクターイエローに試乗      安全確認する『走る実験室』」というタイトルで、名前の由来についてこう説明されていました。「正式名は電気軌道総合試験車。ボディーが黄色いのでこう呼ばれる。東海道?山陽新幹線の博多開業に合わせてデビュー以来十七年になるが、十日に一回、夜間に走るためほとんど知られていない」。Merkmalの同記事は、ドクターイエローというニックネームは1990年代に徐々に浸透していったと結論づけています。

ドクターイエローの車両価格(7両)で25億円

鉄道ジャーナリスト?梅原 淳氏によると、車両の価格は、現在のドクターイエローのうち、T4編成は7両で約25億円、1両平均約3.6億万円。営業車両の700系は16両で約40億円なので1両平均約2.5億円。つまり、1両平均の価格は1億円ほどドクターイエローのほうが高い。ちなみに、現在営業中の最新モデルのN700Sでも16両で約60億円、1両平均約3.8億円(『PRESIDENT Online』[2024年9月7日])。

もともと、線路の点検や工事をする車両は、暗い夜に作業する時にも目立つように車体に黄色が使われました。JR東海によると、新幹線の線路などを点検する保守作業車もやはり黄色で、それがドクターイエローにも受け継がれたのです。

黄色にはもう一つの理由があります。ドクターイエローはお客さんを乗せる営業用の新幹線ではないので、駅に停車中にお客さんが間違って乗らないために「目立つ色」にしているそうです。

初代はT1編成と呼ばれ、団子鼻が特徴的な0系新幹線の試験車を改造して製造。電気で走るようになり、見た目も黄色の0系新幹線で現在の「ドクターイエロー」のイメージに近くなりました。電気関係を点検し、1964年から1974年まで活用されました。(前述のとおり)「T」は「Test」(点検)の略で、数字は導入の順番。

T2編成と呼ばれた2代目は、山陽新幹線が博多まで開業したのに合わせ1974年に登場し2001年まで活用。車内の検査設備が新しくなり、電気設備と線路の点検が同時にできるようになりました。線路は専用の測定車両が夜中に走って点検していたのですが、T2編成の導入により日中にできるようになりました。

T3編成は、JR西日本が保有していたドクターイエローの一つ。現役である700系ベースの923形よりも一つ前の世代で、0系をベースとした車両。T3編成は1979年に製造。国鉄分割民営化後はJR西日本保有の車両として、2005年まで活躍。

現在使用されているのが3代目で、2001年から登場。700系をベースに最新の検査設備を持った特別な新幹線。車両のフロント部に監視カメラを設置できる窓があるのも目立つポイント。2001年に登場したのがT4編成(JR東海所有)で、2005年には同タイプのT5編成(JR西日本所有)が登場。つまり3代目のドクターイエローは2編成が存在。これまでのドクターイエローよりも鮮やかな黄色にしたこともあって、その美しさからファンが増加。

ドクターイエローの体験乗車の抽選率は177倍

(前述のとおり)25年1月29日にラストランを迎えたJR東海の「ドクターイエロー」(T4編成)。そのカリスマ的な人気は次のような点からも伺えます。

前年24年10月12日に行われた「ドクターイエロー」の体験乗車。1席4万円を超える価格にもかかわらず、用意された50席に対して約8,800件の応募があり、抽選倍率は「177倍」。

「ドクターイエロー」はラストの定期運用を終え、大井車両基地(東京都品川区)に回送されました。JR東海は、ラストラン直後の25年2月1日、同車両基地でドクターイエローの「おつかれさま!ドクターイエロー(T4編成)おそうじ体験イベント」を実施。同社によると、約200人の定員に対し、2万3,068人の応募があり、倍率は約115倍だったとのこと。

神出鬼没の「幸せの黄色い新幹線」

営業路線を走りながら電気設備や軌道設備などの状態を確認する「ドクターイエロー」は、(前述のとおり)10日に1回程度しか走行せず、運行ダイヤも公表されていないため、神出鬼没の「幸せの黄色い新幹線」として絶大な人気を誇っていました。

その人気の背景には次のような要因がありました。時刻表が公表されておらず「レア感」があること、目撃できれば幸運につながるという(都市)伝説、「お医者さん」としての役割への敬意?愛着、黄色の「映え」効果、撮り鉄(とりてつ)と呼ばれる鉄道ファンにとっての良質な撮影対象など。

ちなみに、「撮り鉄」とは鉄道車両などの撮影を楽しむ鉄道ファンのこと。それ以外にも、興味の対象分野によって、録り鉄(とりてつ=音鉄)、乗り鉄、収集鉄、模型鉄、駅弁鉄、駅そば鉄(駅ナカのおそば屋)など、多数に分類されるそうです。

乗りものに関する情報メディア「乗りものニュース」が、2019年11月15-18日にかけて、東海道?山陽新幹線を走る「ドクターイエロー」の目撃体験に関するアンケート調査を実施(1,548人から回答)。

(前述のとおり)「ドクターイエロー」は運行日が限られており、走行時刻も公開されていないことから「見ると幸せになれる」とも言われているなかで、実際、見た人には幸運が訪れたのかどうか、を聞いたのです。

目撃したら、試験に合格した、懸賞に当たった!

「目撃した日は良いことがありましたか」という質問には、見たことが「ある」と答えた人のうち16.0%が「(良いことが)あった」と回答しました。

「良いこと」として寄せられた具体的な内容は次のとおりです(183件回答)。「修学旅行中に盛り上がった」「大学などの試験に合格した」「宝くじや懸賞に当選した」「仕事がうまく進んだ」「夫婦の会話が復活した(笑)」など。

引退発表後、グッズの販売が4倍に増加

ドクターイエローの引退は、次のようなビジネスチャンスも生んでいます。「ドクターイエロー」が運用を終えるのを前に、靴下やハンカチといった関連グッズの売り上げが伸びたそうです。JR東海の子会社が運営するオンラインショップでは、(引退間近の)直近の売り上げが昨年6月の引退発表前と比較して約4倍に増加。

インペリアル?エンタープライズ社が、923形「ドクターイエロー」と、世代を超えて愛されるキャラクター『すみっコぐらし』のコラボレーションによる「すみっコぐらし×ドクターイエロー セイコー コラボウオッチ」を販売開始。

グレープストーン社が展開する?東京ばな奈ワールド」は、「【幸せの黄色見ぃつけたっ】東京ばな奈×ドクターイエローコラボバッグ」を販売。

どちらも2024年が60周年となった東海道新幹線とミツカンの調味料「味ぽん」。その「味ぽん」が60周年を迎えた2024年11月10日、両者のコラボ企画として、「ドクターイエロー味ぽん号(T4編成)」が新大阪~東京間で運行。車内は「味ぽん」の装飾が施されました。

ファンや鉄道愛好家に人気のドクターイエローのビジネス面での効果は、グッズ販売以外にもあります。第1が新幹線への関心の喚起です。広い視点で言えば、そうした関心は中長期的に鉄道利用促進にもつながります。「ドクターイエローが走るかもしれないから新幹線に乗ろう」といった動機で、旅行需要が喚起されることも想定できます。

第2が鉄道会社のイメージの向上です。ドクターイエローの存在は、JR東海やJR西日本など、新幹線を運営する企業のブランドイメージ向上に着実に貢献しました。 

アムトラック「ビーチグローブ」

ところで、アメリカにも日本の「ドクターイエロー」と同じように鉄道ファンの間で人気のある「珍しい列車」がいくつか存在します。

第1がオフィスカー?スペシャル(OCS)、レアなビジネス専用列車です。アメリカの大手鉄道会社は、経営陣専用の視察列車(OCS: Office Car Special)を運行しており、線路の点検や特別なイベントに使用されます。これらは定期運行されておらず、目撃するのが難しいため、鉄道ファンにとって特別な存在です。

例えば、ジョージア州アトランタを拠点にするノーフォーク?サザン OCS(黒と金色のFユニット機関車[Fユニット=電気式ディーゼル機関車])、大手貨物鉄道CSX トランスポーテーションOCS(青と銀のFユニット機関車)、ネブラスカ州オマハを拠点とするユニオン?パシフィック ヘリテージフリート(有名な「UP 844」蒸気機関車を含む、UP=Union Pacific)があります。 

第2が連邦政府出資株式会社アムトラック(「Amtrak」=「American」+「Track」(線路))の「ビーチグローブ」(Amtrakの鉄道保守施設名に由来)です。ドクターイエローと同じように、アムトラック(Amtrak)も軌道点検専用車両を運行しています。特に有名なのが、「ビーチグローブ」(Beech Grove)と呼ばれる特殊車両で、アムトラックの銀と青の特別なデザインで塗装されています。

アメリカのこれらの列車は、ドクターイエローのように「見ると幸運」と言われているわけではありませんが、いずれも目撃できるチャンスが限られており、鉄道ファンの間で高い人気を誇っています。

ちなみに、飛行機にも検査用機があります。たとえば、ボーイング「エコデモンストレーター」(未来技術の試験機)。ボーイングは、環境技術をテストするために「エコデモンストレーター」と呼ばれる改造機(真っ白な機体)を運用しています。通常の航空路線には就航しないため、目撃するのは極めて稀だそうです。 

ディズニー新幹線、「なにこれすごい」!

さて、「目撃すると幸せになる」という意味で、JR東海が2025年2月21日から運行をスタートさせた「ワンダフル?ドリームス?シンカンセン」、「ディズニー新幹線」に大きな注目が集まっています。東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」をテーマに特別塗装した東海道新幹線です。「ディズニー新幹線」は語呂/語感がいい!

なお、すでにJR東日本が、2024年10月から東北?北海道新幹線[東京~新函館北斗間]でディズニー新幹線を運行中です。

2024年6月にオープンしたエリア「ファンタジースプリングス」にちなんで、映画「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーターパン」の世界観で車体が塗装されています。車内も特別仕様のヘッドカバーが装着され、車内メロディーは映画「塔の上のラプンツェル」のテーマソング「輝く未来」。なんと、「ドル箱路線」東海道新幹線の車両への特別塗装は開業以来初めての試みだそうです。

東京―新大阪駅間の主に「ひかり」と「こだま」で運行され、9月中旬までを予定。おそらく最速の「のぞみ」を避けて、(停車駅が多く広告効果も高い)「ひかり」「こだま」に乗車する若者や家族づれも増えることでしょう。

運行初日には「ディズニー新幹線」が「X」でトレンド入り。「ディズニーの新幹線見れた?かわいい?」「そうそう、ディズニー新幹線いましたよ。おこちゃま大喜び!」「ディズニー仕様の新幹線 駅止まると新幹線待ちのみんなが笑顔になっとる」といった目撃情報、さらには「満席だったけど朝キャンセルでてて乗れた!」「今日はディズニー新幹線で旅行 内装も可愛すぎ」など「幸せな乗車体験」を報告する多くのコメントが投稿されています。

ドクターイエローの「幸せ配り」の任務が、ディズニー新幹線に無事引き継がれたと解釈できるかもしれません。

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